1916年10月12日 第二回二科展開催。東郷青児が入賞

注釈

東郷青児は竹久夢二の港屋で版画制作に当たるなど活躍していた画家であるが、知人の紹介でフィルハーモニーを率いる山田耕筰と知り合うと、一気に運命が開けた。

山田は東郷に対し、研究所の一室をアトリエとして開放しただけでなく、欧州美術の動向を教え、個展の開催まで手伝った。

東郷の個展は大盛況で、小説家の有島武郎に注目された事で、二科展への出品に繋がり、受賞に至った。

受賞した作品は「パラソルをさせる女」である。

ビーチパラソルの陰に水着の女を配置した絵だが、まるで万華鏡のような色彩と、デフォルメされた構図が特徴であった。

写実派や印象派の影響が強い当時の美術界の中で、東郷の作品はキュビスムや未来派に連なる日本初の前衛美術と称された。

東郷は後にパリに留学し、藤田嗣治やピカソと交流を重ねながら自分の作風を模索し、後の二科会を率いる存在となってゆく。


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