1913年11月7日 葦原将軍に大将の軍服が贈られる

注釈

明治から昭和にかけて、東京・巣鴨の精神病院には、とある名物患者がいた。

葦原金次郎、通称葦原将軍である。

葦原将軍は1885年以来、激しい誇大妄想から精神病院に入っていた。

日露戦争以降に妄想癖が激しくなり、自ら将軍・天皇を自称し、勅を渙発し、院内を我が領土と言わんばかりに闊歩した。

将軍を有名人たらしめたのは、フランスの皇帝が会見を求めに来ただの、アメリカ大統領と相撲を取っただの、荒唐無稽なホラを吹き続けた為である。

将軍が誇大的に時局に堂々と物申す為、新聞記者はネタが無くなると将軍を取材し、将軍の口を通じて世相を批判したものであった。

このように将軍の下には様々な人が出入りし、斎藤茂吉や乃木希典も面識があった。

ある日、大陸浪人の本城安太郎が将軍を訪ねた際、何か希望の品はないかと聞くと、将軍は陸軍大将の礼服が欲しいと述べた。

これを受け、本城は銀紙張りの玩具の帯剣と、紙張りの帽子からなる大将服を贈った。

将軍はこれを大層気に入って、姿勢を正して記念撮影した。

このように将軍はどことなく愛嬌があり、奇抜な言動から格好のゴシップを人々に提供し続けた。


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