1920年1月1日 博文館が「新青年」を創刊

注釈

「国際連盟よ、デモクラシーよ。

世界改造の声は潮の如く、極東の我が日本の岸辺を打ち、我ら青年の血を湧かしむ」

新青年は創刊の辞でこのように豪語した。

その名の如く、少年・青年向け雑誌であるが、その中身は良く言えば何でもござれ、悪く言えばあまり特色が無かった。

冒険奇譚、海外の成功者の伝記、歴史小説、SF小説、戦記物から、内外時評として次の戦争と題する陸海軍将校が記した日米戦争の論文を掲載し、とにかく青少年の興味を惹こうと躍起であった。

ある日、海外の探偵小説を載せたところ、これが読者の好評を得た。

そこで新青年は読者参加型の探偵小説の懸賞を開始した。

ここから江戸川乱歩、夢野久作、横溝正史、水谷準といった一流小説家が生まれた。

23年4月に江戸川乱歩が「二銭銅貨」を発表して以降は、新青年は探偵小説家の主戦場となった。

このように新青年は探偵小説のような大衆小説ブームを背景に、一気にその勢力を拡大した。

菊池寛は大衆小説が広く受け入れられた背景を、以下のように観測している。

「カビの生えた講談から来る退屈と、私小説流行の文壇から来る倦怠とを救ってくれる」

なお、新青年からは探偵小説の他にも、有島武郎の「惜しみなく愛は奪う」や宇野浩二の「苦の世界」が刊行されている。


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