1913年8月5日 岩波茂雄が岩波書店を開業

注釈

岩波茂雄は神田高等女学校の教師であったが、人の子を損なう不安と苦痛を抱き、自ら教師を辞した。

そして、人々に良い本を安価で提供する為に、それが社会に奉仕する正しい事であると信じて、神田神保町に岩波書店を開業した。

当時の業界では古本も新本も値引き販売が主流で、小売店は掛け値を示して客との駆け引きで値段が決まった。

岩波は開店にあたり、値引き販売を取りやめて正札販売に挑戦し、業界に定価販売のルールを定着させた。

このような先駆性を持った岩波は、出版文化の大衆化に貢献する事になるが、それはまだ先の話である。

岩波の真っ直ぐな志は、開店の挨拶状の中で記した、日頃愛誦した7つの格言から読み取れるだろう。

「桃李云はざるも下自蹊をなす。

低く暮し高く想ふ。

天上星辰の輝くあり、我衷に道念の蟠るあり。

此地尚美し人たること亦一の喜なり。

正しき者に患難多し。

正しかる事は永久に正しからざるべからず。

正義は最後の勝利者なり」


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